母になるつもりはなかった私が、仕事と「家族」を選んだ理由
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- 万出 恵 SEKAIA株式会社副社長
教育・ 教育・留学・人材育成事業 を手がけるグローバル人材育成企業、SEKAIA株式会社(旧株式会社ICCコンサルタンツ)にて副社長を勤める。 大学卒業後、オーガニックコスメ・ラグジュアリーブランドマネージャーを経験し、フリーランスへ転職。現在は、SEKAIAで事業運営に加え、人事戦略からマーケ戦略、D&I推進などを手掛け、人と組織の成長支援を行なっている。2児の母。
目次
様々なジャンルで活躍する女性に、豊かなオトナ時間を生きるためのヒントを伺うインタビュー連載。第4回は、グローバル人材育成事業会社副社長、万出恵さん。
「あなたは欲張りな人ですね」そう言われた新入社員

ーフリーランスも経験され、面白いキャリアを築かれていますが、若い頃は新卒で入った会社で定年まで働くと思っていたそうですね
親がサラリーマンでしたから、自分もそうだろうと漠然と思っていました。大学卒業後に最初に入社した会社は、(株)フィッツコーポレーションでした。私の個性を認めてくれて、オープンマインドな 社風が合っていて入社したいと思いました。当時はベンチャーで、上司は取締役。入社直後に彼女から「あなたは欲張りな人ですね 。うちにはあなたのロールモデルはいないけれど、あなたがロールモデルになりなさい」と言われ、とても驚いたことを覚えています。自分が欲張りだとは認識していなかったので! でも今思うと、、そうだったのかもしれません。
フィッツでオーガニックコスメやラグジュアリーブランドに携わるうちに、プロダクトではなく、「人の中にある無形なもの」により興味が芽生え、「人生を豊かにできる何かをやりたい」という気持ちになり、キャリアチェンジしようと決意しました。それでフィッツを退職し、教育関係の会社に転職しました。その頃からずっと「人を豊かにする」というのは、私の中の信念としてあります。
1度目の結婚・離婚で見えた、私が大事にしたいこと

ーフリーランス期間に結婚・離婚も経験されたとか
フィッツを辞めた後、名古屋の教育関連の会社で会社員として働き、結婚もしたのですが、転機がふたつありました。
ひとつは仕事の転機。キャリアアップを考えていた時に、転職エージェントから「女性が意思決定できるような場所がない」と言われて、「それなら自分でやろう!」とフリーランスになりました(笑)。もうひとつは、プライベートでの転機です。当時の夫から「子供ができたら3歳になるまで仕事をしないでほしい」と言われ「それは、できない」と、価値観の相違から離婚を決意しました。
いくら欲張りと言っても、育児も100%、仕事も100%はとても無理です。でも、仕事は諦められない…心底、女性の理不尽さを感じましたね。そして、自分にとっての大事な仕事は?と見つめ直した時、『無形商材である・人の人生の力になれる・自分が活躍できる』の3つのキーワードは絶対に譲れないと思ったんです。
そんな時に、出合ったのが今の会社です。SEKAIAは「この会社が良くなれば、きっと社会が良くなる」と感じられたので、もう一度会社員になることを決めました。自分自身の大切なものを絞り込めてきた時期だったかもしれません。
副社長という立場と母親業
ーそして副社長にまで上り詰められました。会社を変えるために、上にいきたいというお気持ちは強く持たれていたんでしょうか?
今の会社は新入社員の私に「やりたいことをどんどん実現しちゃって!」というオープンな姿勢で受け入れてくれました。組織づくりや事業、色々と挑戦を重ねた結果、今の副社長という立場に至ります。役職が上がると、かえって不自由になると思われがちですが、私は組織の中で裁量をもつことは、実は働き方の自由度を高めることにも繋がると思うんです。無理をして今のポジションにいるというよりは、自分の挑戦を受け入れてくれる環境を主体的に選んだこと、そして家庭で支え合えるパートナー(イスラエル人の夫)の存在が大きかったです。
ー再婚されて、二人の子供も。お子さんたちへの思いを伺っても?
イスラエル人の夫は、子供への接し方が本当に上手で得意なんです。それに「社会のみんなで育てる」という意識が強くて。イスラエルのカルチャーでもあると思います。実は、私はそれまで自分が子育てするイメージを持てずにいました。でも、親戚の子供たちと楽しそうに接する彼を見ているうちに、「彼となら私も子育てができるかもしれない、してみたい!」と、心境に変化がありました。結果、今は息子が二人います。
子供が生まれて、人生観はやっぱり大きく変わりましたね。子供たちは、愛情そのもの。自分以外の人間を何がなんでも守らなくちゃいけないわけですし、子供たちは何より大切な存在です。ただ、息子たちの人生を自分のものだと思ったことは、一度もありません。もしかして、子供への距離感が独特なのかもしれませんが、「子供を私物化しない」ということは大切なことだと思っています。
息子たちは今はインターナショナルスクールに通っているのですが、欧米のお母さんは、子供たちの成績よりも、むしろ子供と遊ぶ時間を大事にしているように感じます。良い意味で影響を受けていることもあるかもしれません。
何者でもない自分がロールモデルになれたら

ー今後の夢があればお聞かせください
キャリアに満足することはこれからもないと思います。常にもっと何かができるはず、と思っているし、私のライフワークとして「ダイバーシティ&インクルージョン」をテーマにしているので、誰もが能力を発揮できる社会実現のための活動は、組織としても、個人としても、続けていきたいと思っています。
以前、セミナーに登壇してくれた友人の言葉がとても心に残っています。
彼は“I want to experience everything that life has to offer.”と語りました。「人生が与てくれるものすべてを、経験したい」と。「これだ」と腹落ちしました。受け身でいるのではなく、良いことも悪いことも全てを経験として味わい尽くし、その上で自ら変化を生み出していくこと。なので今は、「そう思えている私は最強!」って思っています。もともと学生時代からいろいろなアルバイトを経験するほど「なんでもやりたい派」なので、きっと根っこは同じなんでしょうね。全てが今に繋がる大切な学びだったと、自信を持って言えます。
少し先の未来には、子供の手が離れて、もう少し自由になると思うので(笑)そんなことも楽しみに今を過ごしています。
「人生の起こることの全てを経験したい」
万出さんの心を豊かにする3つのこだわり
パワーの源、植物の生命力
「子供が描いた絵と私が育てているグリーンたちです。どんなに忙しくても、自由な感性や植物の生命力に触れると、ニュートラルな状態に戻してくれます。右側のアボカドは種から育てて、ここまでの大きさに。アメリカのレストランで水栽培をしているのを見て、私も水栽培にチャレンジしています。根についた土を洗ってグラスに入れると、見た目もおしゃれで、おすすめですよ!(万出さん)」
食卓を豊かにしてくれるディル、ミント、レモン
「いつからか、外で消費することよりも日々の暮らしを豊かにすることに関心が移り、ミニマリストのような生活スタイルになりました。ゆえに家での食事にはこだわっていて、サラダやミントウォーター、レモン水…ハーブが欠かせません。ママ友の実家がオーガニックファームなので、そこから仕入れています(万出さん)」
撮影/古谷利幸 モデレーター/田口まさ美 エディター/藤木広子