食は、人生を楽しむためのエネルギー源!ヴィーガン料理家のとっておき醗酵調味料とは?
- Renewal Days
- #大人の分岐点
- #PICK UP
- Profile
- 中島 芙美枝 ヴィーガン料理家
ニューヨークの大学を卒業後、国内外のテレビ・広告業界にて映像製作に携わる。自身の体の変化をきっかけに、食と体の結びつきに興味をもち、2014年より「やまと薬膳」オオニシ恭子さんに食養を学ぶ。2017年独立。アトリエ「atelier MARU」主宰。料理教室、ワークショップ、ケータリングなど幅広く活躍。『「一汁一菜からはじめる 野菜でととのうヴィーガンレシピ」料理とお菓子』(山と溪谷社)などの著書も。https://www.fumienakajima.com/
目次
様々なジャンルで活躍する女性に、豊かなオトナ時間を生きるためのヒントを伺うインタビュー連載。第5回はヴィーガン料理家の中島芙美枝さんの登場です。
食の世界に入る前は、外資系テレビ局に勤務し、バリキャリとして仕事中心の生活を送っていた中島さん。食の世界に入るまでのストーリー、大人世代の私たちに食で伝えたいことを伺いました。
体調を崩し体質改善を目指して飛び込んだ食の世界

ーそれまで仕事一筋だった中島さんですが、食の世界に入るきっかけとなったのが体質を根本的に改善するためだったとか?
大学卒業後、テレビ局に就職し、仕事にやりがいも感じていましたが、テレビの世界はとにかく不規則でハードワーク。30代になってからは体調を崩しがちになり、子宮内膜症など婦人科系疾患にもかかってしまいました。
「このままこの生活をしていてはダメだ。根本的に解決しなければ繰り返しになってしまう」と気づき、10代、20代をアメリカで過ごした私はジャンクフードにしっかり染まっていたこともあり、「体をつくっているのは食べものだ」と、食生活を見直す決意をしたんです。娘を出産したことも大きかったですね。子供には健康な体で自分の人生を、大いに楽しんでもらいたいという思いがありました。
薬膳料理家のオオニシ恭子先生の元で勉強を始めていたこともあり、テレビ局退職をきっかけに、食を自分の仕事として本格的に歩み始めました。独立後は、食を通して、働く女性や子供たちの暮らしを豊かにしたいという思いから、野菜を美味しく食べる方法や醗酵調味料を使った料理などを教えてきました。現在は、その学びを体系化した「からだがととのうヴィーガン料理家認定講座」を主宰し、知識と実践を体系的に伝えています。
制限よりも、自然界に近い食材をおいしく食べて、元気に

ー最初はかなり厳格に口に入れるものにこだわりがあったとか
食にこだわり始めた当初は、白砂糖を摂らない、肉・魚を食べないなど、厳しく制限していました。不規則な生活でたっぷりと蓄えた毒素のデトックスにはなった、と個人的には思っていますが、家族がいたり、人づきあいもあるので、ストイックな食生活を続けるのはなかなか難しい面もありました。
何よりも食事は見た目やおいしさにワクワクしたり、みんなと同じ食卓を囲んで、楽しく食べることの方が大事ですから。
そこで「これは食べない」と制限するより、「食材からエネルギーをもらう」という考えに変わりました。
特に旬の野菜は美味しい上に、ビタミンなどの栄養もたっぷりで、腸内環境を整えるのにとてもいい食材です。腸は第二の脳と言われる器官ですから、腸内環境が整うと、体はもちろん、メンタル面もグッとアップするんです。もちろん、食材そのものから元気をもらうわけですから、自然栽培や減農薬の野菜、化学調味料や添加物不使用で醗酵の旨味を使った調味料…など、食材はなるべく自然に近いかたちで口に入れることを大切にしています。
とにかく野菜を美味しく食べて欲しい!そのための醗酵調味料

ー野菜を美味しく食べるためのおすすめの調理法を教えてください
ヴィーガン料理家と名乗ってはいますが、ヴィーガンは選択肢のひとつであって、自分の体やライフスタイルに合った食事を選ぶことが大切です。野菜を中心とした食生活は、体にも優しく、手軽にできるので、もし不調を感じていたり、体質改善をしたいと思っているのなら、意識してみてはいかがでしょうか? 季節の元気な野菜を食べるとか、お肉を食べたら、野菜はその2〜3倍を食べるとか、それぐらいでいいんです。
まずおすすめは、お味噌汁です。味噌は、醗酵調味料の中でも旨味や香りなど複雑な風味があり、具を入れるだけで完結します。旬の野菜のほか、卵や豆腐を入れればタンパク質を、ワカメやアオサなどの海藻を入れればミネラルを補給することができます。具材の栄養、そして素晴らしい発酵食品の栄養を摂ることができる一品です。

それから塩麹です。私は、たまねぎ麹・にんにく麹・塩麹・柚子胡椒・豆板醤(写真右から)など、さまざまな調味料を手作りしていますが、なかでも毎日の食卓に欠かせないのが、塩麹。麹と塩を混ぜて作る日本の伝統醗酵調味料ですが、旨味と甘みの塊で、いつもの塩の代わりに使うだけで料理に深いコクを与えてくれます。いつも入れていたみりんや砂糖がいらなくなったり、出汁がいらなくなったりします。
旬の野菜は、野菜そのものも味わい濃くて美味しいですが、ぜひ塩麹で食べていただきたい。生のトマトにかけたり、ナムルにしたり、ドレッシングに使ったり…野菜がとっておきの料理に変わります。塩麹は簡単に作れますのでぜひトライしてみてください。
【中島さん直伝!塩麹レシピ】
[材料] 生麹100g 塩35g お水ひたひた
[How to]
①生麹と塩を手で混ぜる
②①を瓶に入れ、水を入れて混ぜる。
③常温で1日置いたら、翌日水を足す。
④1日に1回かき混ぜ、10〜14日ほど置く。とろっとして甘い香りがしてくれば完成。
将来は、ジャパニーズヴィーガンを世界に伝えたい
ーこれからの夢や展望を教えてください
私自身は、食を変えたことで、体が変わって、心も前向きに、そして生き方までもが変わりました。
「食べることって、人生を楽しむため」なんですよね。
私たちは更年期世代で、これまではなかった不調や、体力や代謝が落ちてきているのを感じることも多々。ですが、食に気をつけていれば前向きでいられます。例えば、「天気で頭痛がするようになった」→「自律神経が乱れているのかも。だったら、亜鉛とマグネシウムが豊富な貝類や赤身肉、ラムなどの動物性食品を食べてみよう」とか…。仕事柄、ある意味実験的な意味合いもありますが(笑)、食べることで不調と上手に付き合えたら理想ですよね。もちろん足りなければ、サプリメントに頼ることも全然ありです!
子育てがひと段落したら、また海外に挑戦したいと思っています。日本ほど美味しく野菜を食べる食文化はなかなかないんです。日本が誇る醗酵調味料を含め、「ジャパニーズビーガン」を世界に伝えたいと考えています。
ー中島さんが大切にしている言葉は?
WE ARE WHAT WE EAT
食べることは生きること。という意味です。全米で予約の取れないレストラン「シェ・パニース」の創始者であり、オーガニックの母と呼ばれるアリス・ウォータースの言葉です。
中島さんおすすめの市販品の調味料をご紹介
みりん、酒、醤油
きちんと時間をかけて醗酵した調味料 「私の料理に欠かせないのが、岐阜県の白扇酒造の福来純本みりん、熊本県の瑞鷹の純米吟醸酒・崇薫、島根県の井上醤油店の古式じょうゆ。どれもシンプルな材料で作られた自然に近い、調味料です(中島さん)」
撮影/古谷利幸 モデレーター/田口まさ美 エディター/藤木広子