今を懸命に生き、PR、ブランドディレクター、フードスタイリストの”三刀流”キャリアを実現
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- 山本 了子
アパレルのプレスを17年経験後独立。その後、ファッションほかライフスタイル関連のディレクター/PRのほか、フードスタイリストとして雑誌や広告も手がけている。Instagramやブログで発信する 「高校生男子弁当」や、作り置きおかずも人気。
Instagram: @yamamotosatoko
母、妻、娘、嫁……「役割」から距離を置き、豊かなオトナ時間を生きている女性たちから気づいたエッセンスを伺う連載、第9回はファッションと食を軸に、PRやブランドディレクターとして多岐に渡る活動を続ける山本了子さんにご登場いただきました。
「40歳を節目にフリーランスになり、8年目になりました」という山本さんに、これまでのキャリア、仕事と家庭をバランスよく回すコツ、日々の暮らしについて伺いました。

長男を出産後、ライフスタイル全般に興味が広がる
――山本さんはPRの仕事をしつつ、モデルの東原亜希さんが代表を務める『Mother』のディレクターほか、フードスタイリストとしても活躍し、仕事の幅を広げ続けています。まずは、新卒から17年間勤務した会社から独立したきっかけを教えてください。
独立に至るまでは数年間の葛藤があり、「いつから」とは言えないのですが、最初のきっかは、30代前半で長男を出産したことかもしれません。
物心ついてから、ファッションが好きで、アパレル業界に入りました。それから10年近く、ものの見方も思考も服が中心で、ファッションを通して世界を見ていたのです。服の魅力は、美しさのみならず、着た人の気持ちや姿勢も変えるところにあります。
また、服には作り手の思考が現れます。これが着る人の“ありかた”とシンクロすると、大きな力を発揮する。会社員時代は、私たちの服を着た人が、自信を持ったり、幸せになったりして、新たな一歩を踏み出してほしいという思いがありました。これに動かされるように、夢中で仕事と向き合っていたのです。現場で学ぶだけでなく、ショーやアートなどからファッションの知見を増やしていきました。
当然、アウトプット先も主にファッションで、多くの企画を立て実行し、走り続けていたのです。とにかく今を懸命に生きており、忙しくとも充実していました。20代を共に頑張った、ファッション誌の編集者さん、スタイリストさん、モデルさんなどは、今でも“同志”のようにつながっています。
その意識に変化があったのは、30代前半で長男を出産したあたりから。それまでファッションを通して世界を見ていたのに、我が子を通して見るようになると、食、住まい、ヘルスケア、教育、体験などのほか、地球環境にも興味が向くようになったのです。

「ブランドを手伝いませんか?」
――何年も考えた先に独立があったのですね。
はい。次男が小学校に上がるタイミングで、独立をしました。ちょうど40歳という節目でした。当時の私は、仕事を続けながら子育てした経験を活かし、ママ目線のPRをしたいと思う気持ちが強くなっていたのです。
とはいえ、勤務していた会社も好きでしたし、たくさんの経験をさせていただきましたので、迷いはありました。40歳で独立するのは、振り返ってみると良いタイミングだったと思います。社会のこともある程度わかり、経験もスキルになっていますから。
独立とほぼ同時に、モデルの東原亜希さんから「トータルライフスタイルブランド『Mother』を手伝いませんか?」と声をかけていただいたのです。『Mother』の「いつも、ママのそばに。」というコンセプトを元に、ディレクターとしてアイテムを企画し、世の中に広めることは、私がやりたかった仕事のひとつです。
東原さんとは、お互いが夢中で仕事をしていた20代の時に知り合い、いつもパワフルに活動する姿に尊敬していました。今、こうしてビジネスパートナーとして、一緒に仕事をできるのは、本当に幸せなことだと思っています。
『Mother』のアイテムは、安心・安全な食、親子で使えるスキンケアほか、子供を育てる人に寄り添うアイテムばかりです。東原さんや私ほか、お客様の子育て経験をベースに開発しています。「今、こういうものが欲しかったんです」と言われると、本当に嬉しいのです。
『Mother』の他にも多くのファッションや食のPRを行っています。若手から学ぶことが多く、刺激を受けることばかりです。後進を育成する機会もいただくのですが、人間関係作りで大切にしているのは、お互いを認め合うこと。良好な関係があるから、皆に喜んでいただく仕事ができるのだと思います。

子供ができるまで肉じゃがも作れなかった
――独立後は、さらにフードスタイリストとしても活躍しています。
息子が生まれるまで、全く料理ができず、肉じゃがさえも作れなかったのです。それが私の中ではコンプレックスでした。私の母は専業主婦で、料理上手ですから。
子育てをしながら、「母がしてくれたように、私はできていない」という思いがふと出てくることもあったのです。でも、育児は悩んだり落ち込んだりする暇もないほど、タスクが追いかけてくるので、手を動かし続けるしかありません。
苦手な料理も自己流で続けるうちにできるようになり、毎日の食事を回せるようになりました。本気で向き合うようになったきっかけは、夏休みに小学生の息子が毎日お弁当を持って学童に行くようになったこと。息子はきっと家でのんびりしたいはずなのに、頑張って学童に通ってくれていました。それなら、せめてお弁当は頑張ろうと思ったのです。
お弁当箱のふたを開けた時に、楽しい気持ちになり、ママのことを思い出してくれるといいな、と。料理に自信がないけれど、美しく盛り付けることは大好きなので、息子に喜んでもらえるよう、たくさんの工夫をしました。
当時、仕事が忙しく、夜中まで仕込みをすることもありましたが、「今が大切」とお弁当を作り続けました。記録用にとInstagramやブログに上げていたら、ママ雑誌から声がかかり、カラー4ページのお弁当特集を任せてもらうことになったのです。その表紙には、私の名前が有名な料理家さんとともにあり、驚きました。
それ以降、フードスタイリストの仕事が増え、今に至っています。料理や盛り付け、テーブルコーディネートを考えているときは、PRやディレクターの仕事の時と全く違う脳を動かしているので、感性がリフレッシュするような感覚もあります。
今、息子たちは高校生と中学生ですが、お弁当作りはまだまだ続きそうです。
――日々の料理のコツを教えてください。
朝のうちに夕食まで作ってしまうことです。子供が成長すると皆の夕食の時間がばらばらになります。私も仕事から帰ってきて作ることが大変なので、朝のうちに仕込んでおけば、家族それぞれが、夕飯に私の作った料理を食べることができます。
私も、急な仕事や会食が入っても、家族の食事の心配をしなくていいのは、気が楽ですしね。

瞬間、瞬間に全力をつくす
――何を優先するか、メリハリをつけることが大切。
時間も労力も限られているから、全てを完璧にはできません。だからこそ、社会で「こうあるべき」とされているところから距離を置くといい結果になると思うのです。朝に食事を作ってしまうのも、私の場合、仕事と家庭を回すためのベストだったから。
年齢を重ねるほど、こだわりが抜け、自分にとってのベストを選べるようになると感じています。例えば調理器具ですが、私は長く使えるものが好きなので、かつてフライパンはプロ仕様のものを使っていたのです。でも今はホームセンターで売っている、お手頃価格で軽いものを愛用中。毎日使うので、調理と洗浄の負荷が少なく、買い替えしやすい方を選びました。
でも、卵焼き器や中華鍋などは、職人さんが作ったものを使っています。機能優先か、長く使うものか、割り切れるようになってから、暮らしはより豊かになったように感じています。
これは、インテリアやスキンケア、ファッションも同じかもしれません、作り手の思いが表れ、長く使えるものを軸に、肩の力を抜き、今の等身大の自分に合ったものを選ぶようにしています。それにより、心地よく暮らすことができ、それがいい仕事につながっていると思うのです。
そんな山本さんが大切にしている言葉は?
「未来をつくる“今”に集中する」
これまで、私のキャリアを振り返り、大切にしていたことを考えましたが、やはり「未来をつくる“今”に集中する」ことにつきます。瞬間、瞬間に全力をつくしていると、60代も幸せだと思いますし、80代まで仕事を続けるという夢も叶うと思うのです。これは誰にでも当てはまることだと感じています。
――山本さんは、好きなことを軸に、今できることを実行し、しなやかに人生の開拓をしています。山本さんの仕事に共通しているのは「誰かを楽しませ、助けになりたい」というメッセージ。だから、彼女がそこにいるだけで心地いい雰囲気が広がっていくのでしょう。「今から、自分の可能性を開拓したい」と思う人は、山本さんの生き方にヒントが見つかるはずです。
山本さんの暮らしに欠かせないアイテム
シルバー地金のジュエリー
「手元を華やかにしたいけれど、派手ではないものを探していた時に出合ったのがシルバーの地金のジュエリーです。存在感があり雰囲気を引き締めてくれます。もしかすると息子が使うかも…? と思いつつ“エルメス”や“ティファニー”で少しずつ集めています(山本さん)」
作家の手による食器
「器は作家さんが作ったものが多いです。選ぶ基準は和洋中の料理が盛れる…つまり“着回し”できること。実際に手に取り、フォルムや質感を感じてから購入します。ギャラリーやイベントで作家さんのワークショップに参加することもあります(山本さん)」
右上から時計回りに、
「陶芸家・青木亮太さんの器は、薄くて軽くて使い勝手も抜群。青木さんは、現代美術のアートフェアにも多数参加し、アーティストのコラボレーションも多く、注目している作家の一人です(山本さん)」
「唐津で陶芸を学び、現在は神奈川県相模原市で作陶を続ける下村さんです。これらの黒釉(鉄分が多く黒く発色する釉薬)の器は、刷毛や焼き目の跡が残り手仕事の温もりを感じます。使う度に馴染むところも気に入っています(山本さん)」
「2003年に独立し、温もりあるガラス作品を作っている作家さんの皿です。とろりとして丸みある質感や、美しい色、気泡のバランスもお気に入りです。サラダやフルーツを盛り付けるときに活躍しています(山本さん)」
撮影/古谷利幸 モデレーター/田口まさ美 エディター/前川亜紀