「好きと、得意にフォーカス」元ブルーボトルジャパン代表の起業の背景にあったこと
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- 井川 沙紀
新規事業開発や、ブランドビジネスのマーケット展開に従事し、ブランディング・広報・PR領域を担当。米ブルーボトルコーヒーの日本上陸を担当後、日本代表、アジア代表を経て、米・本社の経営メンバー(Chief Brand Officer) になりブランド全体の統括責任者として勤務。現在は自身が立ち上げたインフロレッセンス株式会社のCEOとして、国内外のブランディング・コミュニケーション戦略のコンサルタントや、大学の客員教授、社外取締役として活動。https://inflorescence.co.jp/
目次

自分の可能性を追求するために起業
――井川さんは2015年、日本に上陸した“ブルーボトルコーヒー”の立ち上げを行い、それからたった半年で、創業者であるジェームス・フリーマンさんから「“ブルーボトルコーヒージャパン”の社長をやってほしい」と言われます。それから米国本社勤務、アジア代表を経て、2022年、41歳の時にブルーボトルから独立。7年半在籍し、多大な実績を残した有名企業を辞めるのは、勇気が必要だと思うのですが……。
思い切った選択だったと思います。その理由は2つあり、まず今後のキャリアを見据えて、私自身の可能性や市場価値を試してみたいという思いがあったこと。もう一つはブルーボトルコーヒーの当時、アジア各国の店舗がコロナ禍を乗り越え、拡大期に入っていたことがあります。
私はスタートアップやPRが好きで、得意なんだと思います。ですから、拡大期の会社にいるよりも、より自分の好きなことと、得意なことに専念していきたいという思いが強くなっていったのです。また、当時、コロナ禍が落ち着き、今後の人生を考えるタイミングでもありました。当時の私は、アメリカとアジア各国の時間に合わせ、文字通り24時間仕事をし続けているような生活をしていましたから。
会社を辞め、起業してからも、アメリカ本国にはアジアのマーケットをわかる人が少ないということもあり、引き続きサポートしています。
2024年はブルーボトルコーヒーと、フィンランドのブランド“マリメッコ”のコラボレーション(現在は終了)を行いました。互いのブランドが大切にする「時代に左右されないデザイン」と「日常を豊かにする体験」という共通の価値観をいかし、新しい体験を提供。多くの方に楽しんでいただきました。
また、 “ブルーボトルスタジオ”のグローバル展開も手掛けました。ここは、創業者のビジョンを空間と体験で表現した「場」。完全予約制のプライベートな空間で、最高のコーヒー体験を提供しています。世界第1号となる京都スタジオは、築100年の町屋をリノベーションした空間です。アメリカ、韓国、香港などの都市でも展開しました。
好きなことにフォーカスしたら、心の余裕が生まれ、出会って半年で結婚
――他にも、日本初上陸のフードやレストランなどのブランドを手掛けているのですね。
仕事の範囲は、ブランディング、PRのサポート、異業種から飲食に展開する方のサポートやプロジェクトマネジメントなどです。
最初に、ブランドに込められた創業者の魂や思想を読み解き、丁寧に視覚化します。私はこれがとても好きだから、そのブランドの根幹にあるものを理解するまで突き詰めたくなるのです。
そして、その魂や思想を、日本の文化に照らし合わせ「変えるべきこと」と「守るべきこと」を取捨選択していきます。このローカライズ(翻訳)があるから、多くの方に興味を持っていただいたり、魅力を感じていただけるのだと思っています。
また、日本向けにローカライズしたサービスや製品を、広報とPRで多くの方に知っていただくことを何度も経験してきました。独立後は、こうした「好き」と「得意」に専念しているからこそ、楽しく仕事ができているのかもしれません。
好きで得意な仕事をしているからか、心の余裕も生まれました。それに、組織から離れたので、自分で時間をコントロールできるようになったことも影響してか、仕事も落ち着いたころに知人と再会し、なんと6ヶ月で結婚したことも、ここ数年の大きな変化です。自分でも驚きました。
結婚してからは、ずっと仕事をしていた生活から、一日の終わりに美味しい食事やお酒で「区切り」をつける生活に変化したことで、より充実した毎日を過ごしていると感じています。
夫は私とは全く違う業界にいることもあり、仕事の話をよくします。夫から仕事の相談をされたとき、私が「この話は奥さんモードで返した方がいい? それとも経営者モードがいい?」と冗談で聞くと、夫から「上司モードでお願いします」と返って来たこともありましたね(笑)。
夫はとても自由な人で、「こうでなくてはいけない」とは考えず、柔軟に考え、対応できる。互いに自然体で尊敬できる関係が、仕事にもプラスになっていると感じています。

「学生時代は専業主婦になると思っていたんです」
――井川さんの人生の中心には、仕事があるのですね。
そうかもしれません。大学時代から「働くこと」が好きで、秘書代行、塾講師、飲食店のスタッフ、旅館の仲居さん……最大で7つほどのアルバイトを掛け持ちしていたこともありました。人の役に立つこと、働くことが好きなんでしょうね。
勤務期間が長いほど、責任ある仕事を任せていただけるようになり、世間知らずの学生が、数ヶ月で専門知識を身につけ、言葉使いが変わり、人の役に立てるようになる。そのことは私にとって、大きな喜びでした。気がついたら、扶養の範囲を大幅に超えるほどの収入を得てしまい、親から呆れられたことも覚えています。
学生とはいえ仕事ですから、辛くて苦しいこともありましたが、若かったので気力で乗り越えていました(笑)。幼い頃から、クラシックバレエでプロを目指していたこともあり、ストイックな気質でもあるのかもしれません。
――とはいえ、次の目標を目指すためにも気持ちの切り替えは大切です。
そうなんです。若い頃と違って、ずっと張り詰めたままでは、気持ちも体ももたなくなりますよね。私にとっては、朝が切り替えの時間です。夫より早く起きることが多く、お香をつけて家全体を活動モードにすることが、マイ・ルーティンです。
朝、心身を仕事に向かわせるために、“マリアージュ フレール”の“テ アプレ ロラージュ(雨上がりのお茶)”というお香をつけます。この香りは「雨が過ぎ去った後、草木は眠りから目覚める」ことをイメージしていて、新鮮で心地いい。リラックスしながらも、心身が“ON”モードに入るので、長年愛用しています。
こんなに仕事をしている私ですから、意外かもしれませんが、30歳くらいまで専業主婦になりたいと思っていたのです!
「30歳までに結婚して、子供を産んで、家庭を支える」というのが、一つの理想でした。これは、幼い頃から刷り込まれた、日本の家族観が影響しているのでしょうね。「いい主婦になり母にならねば」という強迫観念のようなものに包まれていたこともあったのですが、これは、仕事に打ち込むうちに消えていきました。

――やはり、自分に正直に生きた方がいいですね。
はい、そうですね。自分が楽しいと思うこと、やりたいこと、誰かの役に立てることを突き詰めることから人生が開かれていくようにも感じています。
あとは、「逃げない」ことかな。私は新卒からブルーボトルに入社する前まで4回転職し、5社経験しています。海外での民泊事業の立ち上げと運営、日本ブランドの海外進出ほか、たくさんの経験をさせていただきました。中には大変なプロジェクトもあったのですが、やり切った先に、今があるような気がしています。
そんな井川さんが大切にしている言葉は?
本質を考える
井川さんが見ているのは、物事の核にある大切なこと。「人の本質が見えるのは、食への考え方や姿勢です。だから私は飲食が好きなのかもしれません」とおっしゃっていました。選ぶレストラン、食べ物にその人の哲学や生き方が反映される。では、そこからあなたは何を選ぶのでしょうか。たくさんの選択肢の中から、自分の本質に合うものを探したくなりました。
井川さんの暮らしに欠かせないアイテム
美容賢者が支持するスキンケアアイテム
(右)外苑前のエステサロン“テルーチェ”のオリジナルオイル、(左)“FAS”のアイクリーム。「テルーチェのオーナー・宮澤輝子さんは私の体の揺らぎと対策を的確に教えてくださり、月1回通っています。宮本さんが開発したオイルは、保湿力が高く香りも癒されます。アイクリームは目元のハリ不足対策に。美容アイテムは詳しい方に教えていただいたものを買うことが多いです」(井川さん)
(右)“テ・ルーチェ”の“フェイスオイル”
(左)“FAS”の“ザ ブラック リフト アイ クリーム”
体調維持は体に合うものを
「体調維持のために飲んでいるものです。(写真右から)コンブチャは植物由来の発酵飲料。お茶に酢酸菌と酵母を加えて発酵させた飲料で、体がすっきりします。オーツミルクはコクと旨みがあるのに軽やか。飲み物や料理に使います。プロテインは、高品質なホエイプロテインと5種の和漢素材をブレンドしています。台湾茶の香りにもホッとします」(井川さん)
(右から)
“KBT”のクラフトコンブチャ“ホーリーバジル”
“マイナー フィギュアズ”の“バリスタオーツミルク(オーガニック)”
“DAYLILY”の“PROTEIN TAIWAN TEA 鉄観音茶”
撮影/古谷利幸 モデレーター/田口まさ美 エディター/前川亜紀