姉妹で料理教室を主宰「得意なことだけ、仕事に」その先にある未来
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- 茂村 美由樹(姉)・千春(妹)
茂村美由樹さん(写真・左)
大阪府出身。幼少期から料理が好きで、20代から京都の料亭や有名シェフの料理教室に通う。ジュエリーデザイナーとして活躍しつつ、2015年『ル・コルドン・ブルー東京校』に入学。グランディプロム、調理師免許、ふぐ調理師免許を取得。卒業後は料理教室、飲食店の商品開発、ケータリングなどを行う。G.I.A.(国際宝石学宝石鑑定士)の資格を持つ。著書に『ごちそう!サンドイッチ』(辰巳出版)がある。Instagram:@miyu_25茂村千春さん(写真・右)
大阪府出身。同志社女子大学文学部卒業、歴史学 修士号取得。料理好きの姉の影響で、韓国料理、和食の教室に通う。京都のイタリアンレストランで調理補助、和食料理教室のアシスタントを経て『エコール辻東京』に入学。卒業後は西麻布の和食店ほか名店に勤務。現在、恵比寿のアトリエにて料理教室『ケの日の食卓』、オンラインサロン『ひとさじ』を姉妹で主宰。https://hitosaji-salon.com/about
目次
自分の軸を大切にし、豊かな人生を送る女性にお話を伺う連載です。第12回目は料理家の茂村美由樹さん、茂村千春さん姉妹に登場いただきました。「直感で佐賀県唐津市に猫4匹と移住したばかりです」「歴史の研究をしていましたが、料理が好きでこの道に進みました」とにこやかに語るおふたりの、幸せに生きるヒントを紹介します。

10年以上、姉妹で料理教室を運営
――茂村さん姉妹は、料理教室『茂村料理教室』を主宰し、10年になります。
茂村美由樹さん(以下・美由樹):30歳で大阪から上京し、ジュエリーデザイナーの仕事をしていたとき、Facebookやブログに作った料理をアップしていたのです。見てくださった方から「教えてください」と言っていただき、自宅で料理教室を開催したことが、全ての始まりでした。
茂村千春さん(以下・千春):私は、京都で料理の仕事をしていたのですが、本格的に学びたいと上京し、姉の教室を手伝うようになりました。姉は洋食、私は和食を専門的に学んでおり、お互いの得意分野を活かしながら、運営しています。
美由樹:私は器と料理を組み合わせたテーブルコーディネートが大好き。千春ちゃんは全体の雰囲気を心地良く調整することが得意なんです。
千春:全体を見てしまうのは、京都のお店や料理教室で働いていた時の経験からでしょうね。どこも全体を見ながら、2手先を読むことが「当たり前」という世界。例えば、「豆をむいておいて」と言われ、持っていくと、「お豆さんの数、いくつでしたか」と聞かれます。料理の飾りなので個数を伝えるのが、当たり前。最初は戸惑いましたが、やがて気配り・目配りの勘所がつかめるように。こういう目に見えない部分を鍛えていただいたことに感謝しています。
美由樹:だから千春ちゃんは手際がいい。2人でお弁当200食を作って納品したり、出張料理人の仕事ができたのも、段取り力があってこそ。上京してから、料理を中心に、人とのご縁がどんどん広がり続けています。
千春:食べることは本当に人を幸せにしてくれる。これは私たちが食べることが大好きな両親に育てられたことが大きいかもしれません。実家にはいつもお客さんがいて、みんなが笑っている。そういう風景の中で成長しました。
専門的な学びが、料理の世界を広げ、深めてくれた
――『茂村料理教室』を始めた時、美由樹さんは35歳、千春さんは31歳と、一般的に料理を始めるには遅いとされる年齢です。
美由樹:それは気にしたことがありませんでした。昔から、好きなこと、興味があることに進んでいった先に、道が開けていく。真剣に取り組んでいると周りも応援してくれますから。当初はジュエリーデザイナーと2足のわらじを履いていたのですが、「なんとかなるでしょ」と続け、気づけば料理に専念していました。
千春:私も姉と似ています。大学院で日本史を学び、卒業しましたが就職先がない。そこで、好きな料理の道に入ったのです。好きだと苦しいことも乗り越えられます。2人とも大きな転換点は、本格的な料理学校で専門的に学んだこと。理論はもちろん、技術や所作も教えていただき、格段にスピードが上がりました。
美由樹:通っていた『ル・コルドン・ブルー東京校』は服装チェック、作業台が整理整頓されているかどうかなど、料理以外のところができてないと減点対象になります。今、料理教室を運営してきて、この時に学んだことがとても生きていると感じます。
千春:コロナ前、金曜日限定で2年間ほど、間借りでおばんざいのお店をやっていたのですが、衛生管理など学校で教わったことが実践で活用でき、学びの大切さを痛感しました。
美由樹:あの時は、献立、仕込み、調理、盛り付け、提供、お会計まで2人でやっていましたからね。とても楽しかったけれど、コロナ禍になってしまって。

店と料理教室は違う「向いていないことはやらない」
千春:間借りではなく、店を出す話も立ち消えになりました。でも、今思うと、それでよかったと思うのです。店はお客様に完成品を召し上がっていただく場です。一方、料理教室は生徒さんと世界観を共有しながら、料理を完成させ、一緒にいただきながら、思いを伝え合う。また、料理への向き合い方などもお伝えしています。お店では、私たちの思いが伝え切れないと感じました。
美由樹:ありがたいことに、多くの方から「お店をやってほしい」とお話をいただいたのですが、私たちには向いていないと感じました。そういうことは、やらない方が後々の幸せにつながっていく。そこで、料理教室を主軸にすることに決め、5年前にこのアトリエを立ち上げました。
――アトリエの扉を開けると、背筋がすっと伸びる、心がほどけるような和の香りが。温かみがあり気品がありながら、親しみやすい。白檀を思わせる香りは、茂村姉妹の佇まいを表しているかのようです。
美由樹:ありがとうございます。香りは気持ちを切り替え、リラックスさせる作用があります。この香りで「さあ、お料理やるぞ」という気持ちになってくださったら嬉しいです。
千春:エントランスのお香は、多くの店でもおもてなしとして使われています。香りで日常から非日常への切り替えもできますし、邪気のようなものも払えると感じます。

物件に出会ってから、2か月で唐津に移住
美由樹:そんな料理教室も、1年前から、対面での料理教室は千春ちゃんがメインで運営しています。私が佐賀県唐津市に移住してしまったから……。
千春:姉はあっという間に移住してしまったのです。「将来、田舎で暮らしたい」とはよく言っていたのですが、まさかこんなに早いとは。
美由樹:マンションが更新になると通知が来て、「このまま東京にいるのもどうなのか」と思い、お世話になっている方に「猫4匹と暮らせる物件はありませんか?」と相談したのです。すると、1週間後に「あるわよ」と返事が来た。場所は佐賀県唐津市だといいます。縁もゆかりもない土地ですが、ピンときて行ってみようと。
すぐに内見に行くと、全てが理想的な家で「ここだ!」と決めました。10月に内見に行って、12月に引っ越していましたから。
千春:姉らしいなと(笑)。唐津に移住しても、オンラインの教室はできますし、レシピ作成などリモートでできる仕事も多いです。私は対面の教室をメインに取り組むことになりました。好きなことを仕事にして、生徒さんや仕事仲間に囲まれ、生きていくことが幸せなのです。

フードロス問題を解決するという新たな目標
――唐津では毎日、どのような生活をしているのでしょう。
美由樹:朝、道の駅のInstagramをチェックして、いい魚が入っていると車で行き、買い物をしてから車内で編み物をするのがルーティン。唐津でも少しずつ料理教室を始めています。
千春:お互いの料理が好きだから、毎日のように食べられなくなったことが寂しい。唐津は魚も野菜も食材が新鮮で美味しいから、姉のInstagramを見て「いいな、食べたいな」と思っています。
東京にいると、地方の物価の安さに驚きます。恵比寿のアトリエの近くはブリが一切れ1400円なのに、唐津は300円。「違う国みたいだね」という話をすることも。 私もよく唐津に行くのですが、穏やかな環境でリフレッシュできる。とはいえ、私は東京でしばらく頑張りますけれど。
美由樹 日本全体で驚くほど美味しい野菜や魚が規格外とされ、破棄されていることは知っていましたが、唐津に来て近くでそれを感じ、とてももったいないと感じてしまって。今、このフードロス問題を解決するために、ソースやドレッシングなど加工品を作れないかと考えているのです。
唐津に住んでいると、漁師さんや農家さんとの距離が近く、さっきまで生きていた魚や野菜をいただくことも多いです。より、命のありがたみを感じることも増えました。この気づきを、料理に活かして行きたいと考えています。
そんな茂村美由樹さん・茂村千春さんが大切にしている言葉は?
ありがとう
千春:心がザワザワした時に、自分に言い聞かせるように「ありがとう」を繰り返すと、心が落ち着くのです。心のみならず、体力を回復させる力もある言葉だと思っています。
美由樹:仕事も楽しいし、私も家族も飼ってる猫も元気で、今が本当に最高です。この瞬間が、一番幸せな時間であることに「ありがとう」と感じています。
おふたりとも、好きな料理だからこそ、仕事を詰め込みすぎてしまうところがあり、今後の課題は余白を意識すること。「心が動く、”誘惑”を大切にして、生きていきたいと思うのです」と話していました。おふたりのように心の声に従っていると、自分軸の幸せが、少しずつ手元に集まってくる……そんな未来を自ら築いていきたいものです。
茂村美由樹さんの暮らしに欠かせないアイテム
料理の味わいが深くなる”きび酢”
「料理の味が決まる“奄美原酢 きび酢”です。両親の出身地・鹿児島県の加計呂麻島でしか作れない、自然発酵の天然醸造酢はほんのり甘いのが特徴。酢の発酵に必要な酵母菌や酢酸菌による深い味で、私は“西田製糖工場”のものを愛用しています」(美由樹さん)
茂村千春さんの暮らしに欠かせないアイテム
布、針と糸
「無心に手を動かすのが好きです。最近は、この“ブティ”(Boutis)という南フランスのプロヴァンス地方のキルト作りをしています。2枚の白い布を縫い合わせ、間に綿を詰め、立体的な模様にするので、”布の彫刻”とも言われています。針を動かしていると、あっという間に時間が経っているのです」(千春さん)
”SUQQU”のアイシャドー・チーク
「メイクのカラーアイテムは“SUQQU”で統一しています。料理になじむナチュラルカラーがお気に入り。左上から時計回りに“シグニチャー カラー アイズ 02”“ブラーリング カラー ブラッシュ05 ”、“モノ ルック アイズ S-01”、“モノ ルック アイズL-04”です。同じものをリピートすることがほとんど」(千春さん)
撮影/古谷利幸 モデレーター/田口まさ美 エディター/前川亜紀